夏に思い出すのは、磯で知らないおじさんに食べさせてもらったウニの味です。目の前で2つに割った殻から、指ですくって食べた濃厚な味は、今でも人生で一番おいしかったと胸を張って言えます。


所属していたスポーツ少年団では、毎年キャンプに行っていました。キャンプファイヤーや炊事もありましたが、一番記憶に残っているのは、川泳ぎでおぼれ、コーチに助けてもらったことです。あれがなければ、「溺れる」という感覚を真に理解できていないと思います。後に、学校の勉強で川のでき方について学んだ際、すんなりと内容が入ってきました。自分がおぼれたのは、淵だったんだ、と。


床屋で丸坊主にした後、迎えが全然来ず、炎天下の中、どうしたらいいかわからず、延々と待っていたときに感じた「さみしさ」や「心細さ」は、皆が携帯を持っている現代では、もう失われたものかもしれません。しかし、国語の読解問題で役に立ちました。


けがして乗った救急車。雷雨の中の自転車。汗をかきながら読んだ本。くさいカブトムシ。木の上に作った秘密基地。涙を流して解いた算数の問題。体と感覚を使った記憶は、心に残ります。暑い・寒い・うれしい・悲しい・痛い・おいしい…気持ちや感覚は、体験してはじめて、自分のものになります。この夏、こどもたちには、五感をフル稼働して、記憶に残る夏にしてもらいたいですね。いつか絶対に勉強にも役に立つ時が来ます。

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